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おもてなし2.0 新時代のおもてなしサービス経営への提言 Vol.6

「先輩の背中を見て学べ」はもう通用しない、おもてなし経営

2017.04.05
EY総合研究所 金城 奈々恵

EY総合研究所では、次世代におけるおもてなしの経営のあり方を、「おもてなし2.0」として提案しています。従来のおもてなしが「おもてなし1.0」とすると、バージョン2.0という意味で、名付けています。おもてなし1.0から、おもてなし2.0へと転換する最大の原動力は、「暗黙知によらない」おもてなしの経営です。

おもてなし2.0の構成要素としては、①「暗黙知によらない」以外にも、②「家族・友人のように」、③「顧客と共に創る」、④「従業員と共に創る」、⑤「地域・社会と共に創る」、⑥「世界に開かれた」という6つの要素があります。サービス産業において、これら各要素の取り組み状況を調査した結果が、<図1>です。

図1 おもてなし2.0 構成要素別 取り組みスコア

(下の図をクリックすると拡大します)

注:数値は、各要素に関連する取り組み状況を、5点満点のスコアとして算出したもの
出典:EY総合研究所 「おもてなしの経営に関する企業レポート」

結果では、「顧客と共に創る」のポイントが最も高くなっており、第5回のコラムの議論であった企業が顧客を一番に考えていることを裏付ける結果となっています。他方、「暗黙知によらない」は、「世界に開かれた」に次いで二番目にポイントが低い構成要素となっています。つまり、企業においては、おもてなしが暗黙知のままであることを示唆しています。

これまでコンサルティングをさせていただいた企業で現場の方にお話を伺うと、「今の若い人は、手取り足取り教えないとだめだ」「見て学んでと言っても、学び取っているのかいろいろと質問しながら確認しないといけない」といった声を、よく耳にします。第1回のコラムでも述べたように、「先輩の背中を見て学ぶ」ということが、通用しなくなってきていると考えます。したがって、暗黙知のままでは、おもてなしが立ち行かなくなることが懸念されます。

「背中を見て学ぶ」慣習のままの企業は、おもてなしが成立する瞬間が現場任せになっていると推察されます。言い換えると、おもてなしの瞬間に経営者が十分コミットしていない可能性があるということです。

おもてなしを現場任せにする比重が高いと、従業員間、店舗間にバラツキが起こりやすくなると考えます。バラツキが起こると何が問題になるのか。それは、おもてなしの品質が安定しない、顧客の期待に添えず顧客満足度が低下するといったリスクが高くなることです。

現場任せにすることで起こるもう一つの問題は、人づくりの面で時間にバラツキができることです。時間がかかってしまえば、生産性の低下につながります。現場任せにしても、優れた現場力によってこのような問題は起こらない可能性もありますが、起これば経営者にとって見過ごせない問題となります。

「当社はマニュアルがあるし、マニュアルに基づいて人事評価もしているから、問題ないはずだ」という経営者の声が聞こえてきそうです。しかし、おもてなしは「コントロール」、「統制」によって実現できるものではないと考えます。むしろマニュアルがないほうが、顧客に心が伝わり、おもてなしの成功率も上がるのではないでしょうか。

では、何を「暗黙知によらず」に見える化すればいいのでしょう。その方法は第一に、従業員一人一人が自然におもてなしができるための「お膳立て」をすること、「心をそろえる」ことです。おもてなしの積み重ねで自社が目指したい姿、おもてなしによってお客様に提供したい価値を明確にすることです。

「当社は、経営理念も行動指針も明文化しているから大丈夫だ」という企業もいるでしょう。しかし、その内容は、従業員の心を揺さぶり、将来の企業の姿が想い描け、ワクワクするようなものになっていますか。また、明文化するだけではなく、さまざまな施策に反映させていますか。

「暗黙知によらない」とは、おもてなしに対する想いや考え、そして価値を見える化するだけではなく、それをあらゆる施策に一貫して反映し実現していくことです。さて、貴社では、おもてなしの「見える化」がどの程度できていますか。

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